医院開業コラム 2025.01.17

クリニック開業に必要な資金は?診療科目別の目安と必要な手続きを解説

クリニックの開業には、多額の資金が必要となることが一般的です。

開業資金は施設の規模や診療科によって異なるため、事前に大まかな金額を把握しておくと開業準備をスムーズに進められます。

この記事では、クリニック開業にかかる費用の内訳や診療科別の金額目安を紹介します。

融資や助成金を活用して資金調達する方法も解説するので、理想のクリニック開業の参考にしてください。

クリニック開業資金の目安

クリニックの開業に必要な資金は、多額の費用が必要といわれています。ただし、この開業資金目安はあくまで参考値です。施設の規模や診療科、立地によって大きく異なるため、事前にシミュレーションしておくことが重要です。

こちらでは、クリニック開業にかかる資金の詳細について、以下の順に説明します。

・開業に必要な資金の内訳
・【診療科別】開業費用の目安
・自己資金はいくら必要?

クリニックの開業を検討している方は、自身の施設状況と照らし合わせながら、必要な資金を確認しましょう。

開業に必要な資金の内訳

クリニック開業費用の主な内訳は、以下の通りです。

・物件取得
・内装工事
・設備購入
・広告
・医師会参加費
・従業員採用や育成
・毎月の固定費
・運転資金

賃貸物件を利用する場合、物件取得費用に含まれるのは、敷金・礼金や仲介手数料、前払い賃料などです。一方、戸建てのクリニックを開業する際には、土地の購入費や建築費用がかかってきます。

クリニック開業に必要な設備は、医療機器やパソコン、施術台、椅子、病床、消耗品などです。収益は収入から、毎月発生する家賃や返済費、人件費、光熱費などの固定費を引いた金額になります。

患者様が安定して来院されるまで、ある程度の期間を要しますので、最低でも6ヶ月分の運転資金も用意する必要があるでしょう。

【診療科別】開業資金の目安

クリニックの開業資金は、診療科によって大きく異なります。医療機器を多く使用する眼科や、広いスペースを必要とする整形外科では開業資金が高額になる可能性があるためです。そのため、クリニックの開業資金を目安として算出することが難しいと考えられます。

そこで以下では、当社がクリニック新規開業を支援した際にかかった機材見積もりを洗い出し、その総額を目安としてまとめました。

診療科目

開業時に導入する機材費用総額の目安

必要機材や設備一例

循環器内科

3,000万円程度

・X線室一般撮影装置システム

・CRシステム

・自動体外式除細動機

・自動血球計数測定装置 

・尿分析装置

・解析付心電計 

・血圧脈波検査装置

・ホルタ記録器

消化器内科

6,000万円程度

・X線CT診断装置

・一般撮影装置システム

・ベッドサイトモニタ 

・尿分析装置

・睡眠評価装置

・超音波診断装置

・内視鏡

・内視鏡洗浄消毒機

・内視鏡保管庫

皮膚科

5,000万円程度

・全身型紫外線治療器

・小型紫外線治療器

・CO2レーザー

・クライオスプレー

・卓上高圧蒸気滅菌器

・小型高周波電気メス

・脱毛レーザー装置

・光治療器

小児科

2,500万円程度

・心電計 

・血球計数装置+CRP

・尿分析装置

・自動体外式除細動機

・超音波診断装置

・卓上高圧蒸気滅菌器 

・薬用保冷庫

耳鼻咽喉科

4,000万円程度

・耳鼻科診察ユニット

・耳鼻科診察椅子

・手術用顕微鏡

・電子スコープシステム

・赤外線フレンツェル眼鏡

・小型高周波電気メス

・CO2レーザー

・自動体外式除細動機

・超音波診断装置

・卓上高圧蒸気滅菌器 

・スコープ洗浄器

・耳鼻科専用鋼製小物

泌尿器

4,000万円程度

・尿流量測定装置フロースカイ

・データ管理システム

・軟性膀胱鏡システム一式

・泌尿器科用診察台

・血球計数装置+CRP

・心電計 

・尿分析装置

・自動体外式除細動機

・超音波診断装置

・ブラッダースキャン

整形外科

(リハ有り)

9,500万円程度

・骨密度測定装置

・電子カルテ

・自動精算機

・心電計

・自動体外式除細動機

・整形用超音波診断装置

・MRI

・リハビリ 一式

※土地建物費用、内装工事費用は含まれておりません。

上記の費用はあくまで目安です。構成内容やリースの利用有無などにより変動します。また、同じ診療科でも検査や処置の対応範囲、開業地域によってもかかる費用が大きく変動するため注意してください。

自己資金はいくら必要?

クリニックを開業する際は、自己資金として用意することが一般的です。開業において自治体や融資の審査を受ける際に、計画的に資金を準備できているかどうかを評価されるためです。

クリニックの開業資金は多額であるため、すべてを用意することは困難ですが、一部の費用を準備しているという事実が信頼に繋がります。開業における審査では、事業の確実性や将来性が判断されるため、自己資金で計画力を証明することが重要です。

ただし、金融機関によっては自己資金が少ない、または無い場合でも融資を受けて開業できる場合があります。

 

当社では、これまでの経験をもとに少ない資金でクリニック開業を目指す方のご相談や事業計画策定のサポートもお受けしています。開業資金についてお調べの方はぜひ「お問い合わせ」からご連絡ください。

クリニックの開業資金を調達する方法

クリニックの開業資金を調達する主な方法は、以下の通りです。

・民間の金融機関
・助成金・補助金
・日本政策金融公庫
・リース会社
・福祉医療機構(WAM)

多額を要するクリニックの開業資金ですが、融資や助成金を活用して揃えることが可能です。クリニック開業に利用できる制度を一つずつ見ていきましょう。

民間の金融機関

クリニックの開業資金を集めるために、民間金融機関の融資を利用する方法です。民間の金融機関は、新規開業を目指す事業者をサポートする融資制度を設けている場合もあります。

金融機関によって融資の対象や条件、補助額などが大きく異なるため、自身に合う内容を見つけることが重要です。

クリニック開業は、地域に根差した事業となることが多いため、地方銀行から融資を受けることが多くなっています。

助成金・補助金

クリニックの開業資金を調達する際は、助成金や補助金を積極的に利用しましょう。クリニックの開業に利用できる主な助成金・補助金は、以下の通りです。

創業補助金(自治体ごと)

医療施設等施設整備費補助金

ものづくり補助金

IT導入補助金

事業承継・引継ぎ補助金

助成金や補助金は基本的に返済不要ですが、審査を通過する必要があり、用途制限に違反すると返還が求められる場合があります。申請しても必ず受給できるわけではありません。

また、補助金は交付が決定してから支給されるまでに、数ヶ月から数年かかることも認識しておきましょう。

日本政策金融公庫

クリニックの開業には、日本政策金融公庫の融資を利用できる可能性があります。日本政策金融公庫は国に運営されている金融機関で信頼度が高く、多くの開業者に利用されています。

特に、日本政策金融公庫が用意している新規開業資金は、女性や若年層、シニア層の開業まで幅広くサポートする制度です。対象は新たに事業を始める者となっているため、クリニックの開業者も含まれます。

融資の限度額は7,200万円、期間は設備資金においては20年以内、運転資金は10年以内です。日本政策金融公庫の融資を検討する方は、事業内容や収支計画を記載した事業計画書を作成したうえで、申請を行います。

(参照:日本政策金融公庫「新規開業資金」

リース会社

リース会社からクリニックの開業資金を調達する方法があります。医療機器や設備だけでなく物件取得の費用もリースに含められるため、開業時に支払う費用を抑えられます。

リースの利用可能金額や期間には限度があるため、融資と合わせて活用するのがおすすめです。リースによって借入金額を減らすことで、将来の可能性を広げられるでしょう。

(参照:医療法人資金調達研究委員会「リース」

福祉医療機構(WAM)

福祉医療機構(WAM)は、医療や福祉の普及促進を目的に融資を行う厚生労働省管轄の独立行政法人です。

無床クリニックにも融資を行っていますが、地域によって条件が異なります。特に無床クリニックの場合、対象となるのは医療資源が不足する「診療所不足地域」が中心です。そのため、主要都市の中心部での開業は融資対象外となる可能性があります。

申請前に、開業予定地が対象地域に該当するかどうかを確認しましょう。また、融資額は3億円以内、返済期間は20年以内が基本です。

(参照:独立行政法人福祉医療機構「診療所へのご融資」

クリニック開業の流れ

クリニックを開業する際は、以下の流れで手続きを進めることが一般的です。

1:開設のスケジュールや物件の図面などを持って保健所へ事前相談にいく

2:施設が完成する

3:保健所へ開設届を提出する

4:保健所の職員が施設の調査に訪れる

5:副本を受け取る

6:厚生局で社会保険の手続きを行う

7:厚生局で保険診療の手続きを行う

新規法人としてクリニックを開業する場合は、施設完成後に法人認可が必要です。

開設届を提出する際は、従事する医師全員の医師免許の写しや土地及び建物の登記事項証明書などもあわせて提出します。

エックス線を取り扱う施設では、エックス線装置備付届も求められるため準備しておきましょう。

(参照:東京都保健医療局東京都南多摩保健医療局「診療所・歯科診療所の開設等」

クリニックの開業資金は計画的に集めよう

新しいクリニックを始めるには多額の資金が必要になるため、計画的に開業準備を進めていかなくてはなりません。

まずは、クリニックの規模や対応する施術の範囲などを確認して、大まかな開業資金を把握しておきましょう。

クリニックの開業資金には融資や助成金を活用することが一般的です。特に金融機関の選び方や事業計画書の策定などは複雑で、何から始めればよいのか悩んでしまうという方もいるでしょう。

 

当社では、企画から施工、アフターケアまで自社で一貫したサポートを提供しております。医療施設、福祉施設、クリニック、調剤薬局の設計・施工をご検討中の方はぜひ当社までご相談ください。

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