クリニック設計の重要性とポイント|内装デザイン事例や費用目安を解説
クリニックは患者が快適に過ごし、スタッフにとっては効率的に働ける空間でなければいけません。
医療施設には法令や規制があるため、デザインと安全性、運営効率を両立する設計が求められます。
今回は、クリニック設計の重要性とポイント、費用相場について解説します。また、クリニック設計に欠かせない設計業者の選び方、実際の施工事例も紹介しますので、ぜひご覧ください。
クリニック設計の意義と重要性
クリニック設計では、単に建物を建てるだけでなく、患者満足度と医療品質の向上、経営効率化を考えた設計が必要です。
快適でストレスのない空間を提供することで、患者の不安を和らげ、クリニックへの信頼感を高めることができます。例えば、待合室に自然光を取り入れ、個室感を演出したパーティションを設置することで、患者はリラックスして順番待ちができるでしょう。
また、受付から診察室、薬局への動線を最適化することで、診療をスムーズに進め、患者の待ち時間短縮にもつながります。これは、患者の満足度向上だけでなく、スタッフの業務効率化にも貢献し、医療サービス全体の品質向上を可能にします。
さらに、クリニック設計は経営面にも影響を与えます。効率的な設計は、スタッフの移動距離を減らし、患者受け入れを効率化することで、人件費や光熱費などの運用コストを削減できます。
クリニックの信頼性向上、地域への定着、長期的な経営成功を実現するためにも、戦略的なクリニック設計が欠かせません。
クリニック設計と法令遵守
クリニック設計では、法令を守りつつ安全性の確保が大切です。医療施設は、法令遵守と安全性の確保をしなければなりません。患者とスタッフの安全を確保し、安心して利用できる施設が実現します。
クリニック設計に関連する具体的な法令について、以下の表にまとめました。
法令 |
概要 |
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建築基準法 |
・クリニックの建物の構造や耐震性基準に関わる法律 ・病院とクリニック(診療所)には違いがある ・病床数で制約が変わる |
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病床:0 |
クリニック |
一般建築物 |
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病床:1~19 |
クリニック |
特殊建築物 |
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病床:20以上 |
病院 |
特殊建築物 |
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医療法 |
・医療機関の運営や設備に関する法令 ・MRIやレントゲンなどの大型設備を導入する際など、どのような構造の部屋でないといけないか基準が定められている |
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消防法 |
・火災や災害に対する安全対策を行うための法令 ・有床診療所や病院扱いの場合、制約が大きい ・無床診療所にも設備基準がある |
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バリアフリー法 |
・建物規模により廊下の幅やトイレなど基準を満たす必要がある |
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自治体条例 |
・各自治体によって独自に基準を設けている場合がある ・例:北海道では「北海道福祉のまちづくり条例」がある |
※具体的な規制は自治体ごとに異なるため、開業前に確認が必要です
法令を順守した設計は、安全性と運営効率を両立させ、安心して利用できるクリニックを実現します。
クリニック設計で押さえるポイント
クリニック設計で押さえておきたいポイントは主に以下の内容です。
・診療科の特徴を考慮 ・スタッフが動きやすい動線 ・患者がリラックスしやすい環境 ・患者のプライバシーを確保 ・感染症対策ができる設計 ・認知度を高めるデザイン |
それぞれ詳しく解説します。
ポイント1:診療科の特徴を考慮
診療科の特徴に合わせた設計が、適切な医療サービスを提供するために重要です。診療科ごとに必要な設備やスペースが異なるため、クリニックの設計も合わせる必要があるからです。
例えば、眼科・整形外科・耳鼻科などの場合には、様々な医療機器を使用することが多いため、設置できる広さの施術室を用意する必要があります。また、プライバシーへの配慮が必要な精神科や産婦人科などでは、動線や音漏れに配慮が必要です。
小児科の場合、子どもが安心して治療できるように医療機器をなるべく見せないように収納し恐怖を感じさせない設計にするなどの対策もあります。診療科の特性に合わせた設計は、質の高い医療サービスの提供につながります。
ポイント2:スタッフが動きやすい動線
スタッフの動きやすい設計が、業務効率と働きやすさを向上させます。スタッフは一日中動き回るため、無駄のない動線設計が業務負担を軽減し、スムーズな診療を実現するためです。
頻繁に使う医療機器を動線上に配置し、人通りが多いスペースを確保することで効率を高められます。また、スタッフの人数に合った適切な広さの部屋を設けることも重要です。スタッフの動きを考慮した動線設計が、負担を減らし、クリニック全体の効率を高めます。
ポイント3:患者がリラックスしやすい環境
患者がリラックスできる環境は、診療の質を向上させます。不調や診察への緊張感がある患者にとって、リラックスできる空間は重要です。安心感を与えることで、患者満足度が向上します。
心が落ち着く音楽を流し、穏やかな色合いのインテリアを取り入れると効果的です。
また、キッズスペースを設けることで、子連れの患者にも配慮した環境が提供できます。患者の不安を和らげる工夫を施すことで、信頼されるクリニックを実現できるでしょう。
ポイント4:患者のプライバシーを確保
患者のプライバシーを守る設計は、安心して診療を受けられる環境の鍵となります。
患者の中には、他人に自身の症状や相談内容を知られたくないと感じる方もいるためです。プライバシーを配慮した設計が信頼感を高め、安心して通院してもらえます。
例えば、待合室では敷居や壁を設置して他の患者から見えないようにします。診察室では音漏れ対策も必要です。動線を工夫して、通路や受付の配置を考え、他の患者と顔を合わせる機会を減らすことも効果的です。
事前にプライバシーに配慮した設計を行うことで、快適な環境を提供できます。
ポイント5:感染症対策ができる設計
クリニック設計には、感染症リスクを抑える仕組みが欠かせません。感染症の流行時には、クリニックが感染拡大の場にならないよう配慮する必要があるためです。
十分な換気量の換気設備を設置し、さらに、消毒、ふき取り掃除のしやすい素材の選定をすることで感染を予防します。
診療科目によっては発熱外来を設けるなど感染、非感染の動線を分ける設計をします。感染拡大の場になってしまわないように、設計段階から考慮しておくことが大切です。
ポイント6:認知度を高めるデザイン
地域の方にクリニックの存在を認識してもらうことも重要です。
「病気になってから慌てて病院を探す」のではなく、「普段からクリニックの存在を意識し、いざという時に安心して受診できる」という状態を作ることで、地域医療への貢献を目指します。
例えば、建物の色や形を周囲の景観に調和させつつも目を引くデザインにする、看板は見やすく分かりやすいものを設置する、夜間でも安心できるよう適切な照明を導入する、といった工夫などです。
デザインを通して、地域に開かれたクリニックであることをアピールし、住民の皆様に「ここに行ってみよう」と感じていただけるような、親しみやすいクリニックを目指しましょう。
クリニックの設計・施工事例
ここからは、当社が設計・施工した事例を3つご紹介します。
事例1:眼科クリニックの華やかなで高級感のある内装デザイン
(施工実績|札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニック 新装工事)
札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニックの新装工事の施工事例です。
建物用途 |
診療所 |
建物所在 |
札幌市南区 |
構造規模・面積 |
面積:341㎡ |
洗練された空間や高級感のあるデザインが特徴のクリニックです。
高級感のある華やかなデザインは、施術への期待感や満足度を高める効果やクリニック全体のブランドイメージを高めることにもつながります。
(ゆとりのあるスペースを確保)
また、使用する機器が多い眼科の特徴を考え、ゆとりのあるスペースを確保しています。スタッフが動きやすい動線も考慮された設計が特徴です。
事例ページの詳細はこちら:札幌ひかげ眼科・目もとの美容外科クリニック
事例2:子どもから大人まで通える耳鼻咽喉科クリニック
北円山耳鼻咽喉科アレルギークリニックの新装工事の施工事例です。
建物用途 |
診療所 |
建物所在 |
札幌市西区 |
構造規模・面積 |
面積:150㎡ |
子どもから大人まで、幅広い年齢層が来院する耳鼻咽喉科クリニックです。
待合室には、通常の椅子の他に、壁向きで机があり読書や書き物ができる椅子も設置。患者様それぞれが待ち時間を有効活用できる設計になっています。
(キッズスペースも設置)
上記画像のようにキッズスペースも設け、子ども連れの方にも安心して来院できる環境を整えています。
事例ページの詳細はこちら:北円山耳鼻咽喉科アレルギークリニック新装工事
事例3:検査後に安心して休めるプライベート空間がある内科クリニック
札幌北円山内科・内視鏡クリニックの新装工事の事例です。
建物用途 |
診療所 |
建物所在 |
札幌市西区 |
構造規模・面積 |
面積:225㎡ |
(カーテンを使用したプライベート空間)
内視鏡クリニックでは、検査で鎮静薬などを使用した場合、患者様が安心して休めるスペースや椅子が必要になります。
こちらのクリニックでは、一人ひとりにカーテンで仕切られたプライベート空間を提供。検査後の休息を快適に過ごせるよう配慮しました。
事例ページの詳細はこちら:札幌北円山内科・内視鏡クリニック 新装工事
クリニック設計と内装にかかる費用目安
クリニック設計と内装にかかる費用については、まず設計業者に相談しながら進めることをおすすめします。近年、クリニックの内容に限らず主要建設資材の価格が高騰しているためです。
実際、国土交通省が発表している資料でも、2021年後半から原材料費やエネルギーコストの上昇によって、各建設資材価格が高騰しています。
資材によって傾向は異なるものの、全体としては小幅な上下で高止まりが続いている状態です。
(出典:国土交通省|最近の建設業を巡る状況について【報告】)
主要建設資材の価格高騰により、当初の見積りよりも予算が必要になる場合もあります。予算を大幅にオーバーしないためにも、設計業者と連絡を取りながらクリニックの内装工事を進めることがおすすめです。
クリニック設計業者の選び方
クリニック設計業者の選び方のポイントは以下の通りです。
・クリニック設計・施工の実績がある ・設計以外の部分もサポートしてくれる ・地域に根差している |
それぞれ詳しく解説します。
クリニック設計・施工の実績がある
クリニックや医療施設の設計実績が豊富な業者への依頼が大切です。医療施設は、法規制や機能性、安全性が求められます。経験豊富な業者なら、これらに対応し、トラブルの少ない施工が可能です。
過去に複数のクリニック設計を手がけた業者であれば、診療科に応じた適切な動線設計や、プライバシー保護のためのレイアウトが可能です。また、医療機器の設置に関する規制にも対応できるため、安心して任せられます。
設計以外の部分もサポートしてくれる
クリニックの開業には、企画から施工、アフターケアまでさまざまな工程が必要です。そのため、設計以外の部分までトータルでサポートしてくれる業者かどうかも重要なポイントとなります。
診療科目による特徴を考えた設計や空間デザイン、土地や保険、開業における設備リースなど幅広いサービスをワンストップで対応してくれる業者に相談することで、抱えている課題を解決でき、スムーズに開業を進めることが可能です。
地域に根差している
地域の特性を理解している業者に依頼することで、地域住民に親しまれるクリニックを実現できます。地域ごとに気候や交通事情、患者層が異なるため、こうした特徴を踏まえた設計が求められます。地域に根差した業者であれば、その地域の特徴を考慮した設計が可能です。
例えば、北海道などの雪が降る地域では、玄関付近の滑り止め対策が必要です。また、高齢者の多い地域では、段差をなくしたバリアフリー設計や休憩スペースを充実させるといった配慮が求められます。
クリニックの設計は実績のある業者への依頼がおすすめ
クリニック設計を成功させるには、実績豊富な専門業者に依頼することが重要です。医療施設の設計には、一般的な建築とは異なる法規制や特有の設計ノウハウが求められます。
経験豊富な業者は、これらの要件を理解しているため、トラブルを回避しながらスムーズに施工を進めることが可能です。
また、診療科ごとの特徴に合わせた最適な設計を提案でき、患者満足度の向上にもつながります。法規制を遵守しつつ、患者とスタッフ双方にとって快適なクリニックを目指しましょう。
当社では、企画から施工、アフターケアまで自社で一貫したサービスを提供しております。また、資金調達や事業計画策定のサポートも対応可能です。医療施設、福祉施設、クリニック、調剤薬局の設計・施工をご検討中の方はぜひ当社までご連絡ください。