医院開業コラム 2025.06.16 NEW

開業医になるには何を準備すべき?開業の平均年齢から成功のポイントまで解説

勤務医から一歩踏み出し、「自分の理想の医療」を実現したいと考える医師は少なくありません。とはいえ、クリニック開業には物件選定や資金調達、スタッフ採用まで多くの準備が必要で、不安を感じる方も多いはずです。

 

この記事では、開業医になるにはどんな準備が必要かを軸に、開業までの手順や必要資金、適した年齢やタイミング、成功のためのポイントまで、実践的な視点で詳しく解説します。

開業医になるまでの手順と必要な準備

クリニックの受付

クリニックを開業するには、医師免許だけではなく物件の選定や設備導入、資金調達、人材採用など、段階的な準備が必要で、それぞれに専門的な対応が求められます。各ステップについて具体的に見ていきましょう。

 1:物件探しと開業エリア選定

最初に行うのは診療圏分析(昼間人口・夜間人口・競合・交通動線を数値化する市場調査手法)です。クリニックは半径1〜3km圏内の昼間人口・夜間人口と競合状況が収益に直結します。

医療モールやロードサイド物件は認知度を確保しやすい反面、賃料が高い傾向があるため、固定費と集患効果のトレードオフを検討する必要があります。

候補物件を複数ピックアップしたら、保健所の用途地域規制や駐車場台数の要件を確認し、仲介契約前に必ず行政相談を実施します。

2:開業資金の調達と自己資金の準備

クリニックの開業資金は、自己資金を用意することが一般的です。開業において自治体や融資の審査を受ける際に、計画的に資金を準備できているかどうかを評価されるためです。

クリニックの開業資金の全額を自己資金として用意することは困難ですが、一部の資金を準備しているという事実が信頼につながります。

開業における審査では、事業の確実性や将来性が判断されるため、自己資金で計画力を証明することが重要です。

ただし、当社の事例では、自己資金が少ない、または無い場合でも金融機関から融資を受けて開業できた場合があります。

当社では、これまでの経験をもとに少ない資金でクリニック開業を目指す方のご相談やサポートもお受けしています。開業資金について不安な方はぜひ「お問い合わせ」からご連絡ください。

3:建築設計・設備の準備

続いて、内装や設備の準備をしていきます。患者さんにとって快適で安心できる空間をつくるためには、診療科に合った設計や動線の工夫が必要です。

例えば、受付から診察室、処置室までの移動がスムーズだったり、感染症対策を意識したつくりになっていたりすると、患者さんにもスタッフにも優しいクリニックになります。

当社では、開業される先生の「こうしたい」という想いをしっかりヒアリングしながら、設計・レイアウトから施工までを一貫してサポートしています。開業後の診療スタイルや将来の展開も見据えた空間づくりをご提案しています。

また、医療機器については診療科によって必要な設備が異なります。高額な機器は購入・リースなどの方法があり、コストや使い方に応じて選ぶことができます。

レイアウト設計や機器の配置、内装工事のスケジュールなど、このタイミングで考えておくことで、あとからのトラブルや修正を防ぐことができます。

関連コラム:クリニック開業に必要な資金は?診療科目別の目安と必要な手続きを解説

 

4:スタッフ採用と雇用管理

クリニックの運営には、医療事務や看護師など、頼れるスタッフの存在が欠かせません。

採用活動では、どこで募集するか・どんな人を選ぶか・雇用条件をどうするかをしっかり考えることが大切です。

募集方法としては、ハローワークに加えて、医療系の転職サイトや人材紹介会社を活用することで、より多くの応募者を集めやすくなります。

採用後のトラブルを防ぐためにも、雇用契約書はしっかり整備しておくことが重要です。業務内容や勤務時間、残業の取り扱い、インセンティブの有無などを明記し、後々の誤解を防ぎましょう。

上記の4つが、開業準備で特に重要なステップです。

その他にも、広告・集患の準備や診療体制の設計など、開業直前に検討すべきこともありますが、まずはこの4つを押さえておくことが成功の土台となります。

新規開業医の平均年齢

日本医師会が実施したアンケート調査によると、新規開業医全体の開業時の平均年齢は41.3歳とされています。

新規開業医全体の開業時の平均年齢グラフ

※出典:社団法人 日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」

開業後5年以内の医師の開業年齢が平均44.9歳と最も高くなっている点も注目すべきポイントです。反対に、30年以上前に開業した医師は平均37.5歳で開業しており、時代とともに開業のタイミングが後ろ倒しになっている傾向が見て取れます。

開業医になるタイミングと年齢ごとのポイント

「開業に関心はあるけれどまだ早いのでは?」や「今を逃すともう遅いのでは?」

このように、開業タイミングの見極めで悩む勤務医の方は多くいらっしゃいます。

ここでは、年齢ごとの傾向や特徴を踏まえながら、あなた自身の状況に合わせた判断のヒントをお届けします。

20〜30代:早期開業のメリットと注意点

20代〜30代での開業は、長期的な事業展開を見据えやすく、将来的な成長余地を確保しやすいのが大きなメリットです。診療スタイルや組織文化をゼロから自由に設計できる点も魅力です。

ただし、臨床経験や信用実績が乏しい場合、診療スキルや患者からの信頼の面でハードルとなることがあります。特に融資面では、金融機関から自己資金を多く求められる傾向もあるため注意が必要です。

経営経験がない場合でも、信頼できるコンサルタントやメンター医師とのネットワークを早期に築き、PDCAサイクルを回す仕組みを導入することが成功につながります。

40代:ボリュームゾーンと経験の安定感

40代は、新規開業医の年齢分布でもっとも多い「ボリュームゾーン」です。

医師としての実績も十分に積み上がり、診療技術や人脈の面でも有利なポジションにある方が多く、患者からの信頼も得やすくなります。金融機関からの信用も高まり、融資条件が比較的有利に進めやすくなるのもこの年代の強みです。

一方で、家族の教育費や住宅ローンといった支出も重なりやすい時期であり、資金繰りには慎重な設計が求められます。

事業投資と家計のバランスを取りながら、法人化や節税策などを活用して、将来を見据えた資産形成まで含めた経営戦略を構築することが重要です。

50代以降:セカンドキャリアの選択肢

50代以降の開業は、豊富な臨床経験や専門性、業界内の人脈を最大限に活かせるという強みがあります。病院勤務で培った専門領域をもとに、ニッチな分野に特化したクリニックを開業するなど、差別化しやすいのがこの年代の特徴です。

また、退職金や長年の貯蓄を自己資金に充てることで、融資額を抑えてリスクを小さくしながら開業できるのも魅力です。ただし、投資回収期間が短くなるため、設備投資のペイバックや収益化スピードの見通しをしっかり立てておく必要があります。

体力面の負担を軽減するため、診療時間や曜日の設定を柔軟にし、オンライン診療や訪問診療を取り入れて収益の安定化を図る工夫も重要です。

開業医になるメリットとデメリット

開業医として働くことには、勤務医では得られない自由ややりがいがあります。一方で、経営者としての責任やリスクも伴います。ここでは、開業医のメリットとデメリットを比較表で整理しました。

視点

メリット

デメリット・リスク

収入面

・自由診療や検査で高収益が見込める
・経営努力が収入に直結する

・初期投資・運転資金が大きい
・経営不振で赤字の可能性も

裁量面

・診療方針やサービス内容を自由に決められる
・院内のルールや文化も自分で設計できる

・全ての意思決定を自分で行う必要がある
・プレッシャーや孤独感を感じることも

働き方

・勤務時間や休日を自由に設定可能
・ライフステージに合わせた働き方が実現できる

・雑務で時間が不規則になりやすい
・長時間労働になることも

組織づくり

・理想のチームを一から構築できる
・採用方針や評価制度も独自に設計できる

・採用・育成・離職対応などの労務負荷が大きい
・マネジメントが求められる。

経営リスク管理

・保険・顧問契約・複数収益でリスク分散が可能
・事業形態を柔軟に調整できる

・患者減少や診療報酬返戻など、突発的リスクに常時備える必要あり
・経営悪化時の対応が自己責任

このように、開業医は自由度が高い一方で経営責任も重くなります。事前に収入と裁量を取るのか、安定と負担軽減を取るのか、自分の価値観に照らして判断することが大切です。

開業医として成功するためのポイント

医師が勉強している様子

開業を成功させるためには、特別な才能やスキルだけが必要なわけではありません。ここでは開業医として成功するために必要なことを解説します。

 臨床経験と専門性で信頼を築く

開業医として何より求められるのは、地域の患者さんからの「この先生なら大丈夫」という信頼です。その基盤となるのが、これまで積み重ねてきた臨床経験と、自身の専門領域です。

大学病院や基幹病院での勤務経験は、患者はもちろん、スタッフや金融機関にとっても信頼材料になります。

さらに、各学会が認定する専門医資格を持っていると、診療の質と専門性を明示でき、ホームページや院内掲示などでも差別化につながります。

「このクリニックに通えば安心」と思ってもらえる土台は、過去の経験のなかにすでにある可能性があるので、まずは経験やご自身の強みを振り返ってみましょう。

経営に向き合う「判断できる院長」になる

開業すると、院長は医療だけでなく経営判断のすべてに責任を持つことになります。

とはいえ、すべてを自分でこなす必要はありません。重要なのは、必要な情報を理解し、適切に判断できるかどうかです。

たとえば、以下は経営の「基礎体力」ともいえる知識です。

  • ・雇用契約やスタッフマネジメントの基本
  • ・毎月の収支の見方や資金繰りの感覚
  • ・開業前に想定される経費と売上のバランス

    完璧である必要はありませんが、判断の土台になる知識だけは持っておくことが、ブレない経営につながります。

    セミナーやオンライン講座で必要な知識を補ったり、顧問税理士や社労士と連携することで、「診療に集中できる環境」を整えることが可能です。

    信頼できる支援チームと組む

    開業を一人で乗り切ろうとする必要はありません。

    むしろ、早い段階で専門家とチームを組むことが成功につながります。

    • ・税理士・社労士・司法書士:法人化、雇用、会計などの制度対応
    • ・不動産会社:物件契約、医療機器、導入設備の適正化
    • ・開業支援コンサルタント:事業計画、物件選び、内装、広報までトータルサポート
    • ・医師会・商工会議所:地域連携や補助金・助成制度の情報源に

      誰に相談すればいいかわからない段階でも、「こういうことが不安」と口に出すことがスタートになります。

      医療に専念するためにも、自分の苦手や不得意をカバーしてくれる人たちを、開業前から少しずつ見つけていきましょう。

      まとめ:開業医としてクリニックを実現するために準備を始めよう

      開業医になるには、医療スキルだけでなく、経営感覚やマネジメント力が求められます。物件選び、資金計画、人材確保などやるべきことは多いですが、ひとつずつ丁寧に取り組めば確実に前進できます。

      年齢やキャリアによって開業のスタイルは異なりますが、「自分らしい医療を提供したい」という想いがあれば、どのタイミングでも成功のチャンスはあります。

      不安がある方は、信頼できる専門家に早めに相談することをおすすめします。小さな一歩が、あなたの理想のクリニックのはじまりになるかもしれません。

       

      当社では、クリニック企画から施工、アフターケアまで自社で一貫したサービスを提供しております。また、資金調達や事業計画策定のサポートも対応可能です。医療施設、福祉施設、クリニック、調剤薬局の設計・施工をご検討中の方はぜひ当社までご連絡ください。

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